最期を迎える患者さんに近づくこととは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
candle-826328_640

以前の職場には、
緩和ケアに関心を持った看護師が、
研修に来ることがありました。

 

意欲はあっても、
それぞれの病院で違いがあるのが当然ですので
皆、戸惑いの連続です。

 

ある研修生さんは、
患者さんのケアを熱心に行い
勉強も記録も真面目に行う
優秀な方でした。

 

 

受け持った女性も
明るく非常に聡明な方で、
研修生さんを快く迎えてくれました。

 

 

初めから良い関係性が築けていたのですが
だんだんと病状が下り坂になる中、
研修生さんは患者さんに
今一歩近づけない部分があり
悩みになっていきました。

 

 

それは
家族が勧める外泊に、
本人が頷かないことでした。

 

 

家族は、動ける今のうちに
自宅に外泊して欲しいと望むのですが、
ご本人はそれを断るのです。

 

 

それに対し、
ご本人にどうしてかを詳しく尋ねることに、
躊躇がありました。
研修生さんも、本当は家族が言うように
今、そのチャンスがあるうちに
帰って欲しいのです。

 

 

ですが、そんな意図を持って聞いてしまうと、
患者さんの率直な思いが受け止めにくくなります。

 

 

また、患者さんが体調の改善に期待を寄せ、
もっと後になってから帰りたいと思っていたら、
どう対応できるだろうか。

 

 

もしかしたら、
そんな不安がよぎったのかもしれません。
ですが

 

 

患者さんの真意に近づくことができず、
当たり障りのない会話でいるだけならば、

 

 

おそらくこの研修中、
自分の成長は感じられないのではないか?
自分の病院に戻っても、
同じことを繰り返すのではないか?

 

 

そのように背中を押すことで、
研修生さんも勇気を出して、
患者さんに尋ねることができました。

 

 

すると、懸念していたようなことではなく、
自宅に戻るチャンスはなくなることは
承知の上で、

 

 

これまでの闘病中
夫にはずっと世話になってきたので、
これ以上の世話を掛けたくないというのが、
彼女の本音だとわかりました。

 

 

患者さんは、
残された時間を
十分に意識した上で

 

 

長年に渡る闘病期間、
家族とのかけがえのない時間を
存分に過ごせたという思いだったのです。

 
患者さんの真意には、
家族を思いやる気持ちがありました。
研修生さんは、その思いを真摯に受け止めました。

 

 

患者さんの真意に触れた研修生さんは
患者さんとの関わりや会話を
私に教えてくれるたび
涙を流していました。

 

 

そのくらい患者さんに
近づくことができました。

 

 

患者さんが
自分の死を前にどのようなことを思い
何を望み
どのようなことを残したいのか

 

患者さんに一歩二歩
時には勇気をもって
こちらが近づいていくことによって
本当にその方らしい生き方を全うすることの
手助けができます。

 

外泊は形を変え、
病室に家族が集まり
自宅のような雰囲気で過ごすことができました。

 

 

その方はたくさんのお別れと感謝の言葉とを
研修生さんに伝えて下さいました。

 

 

そして実習最終前夜にお亡くなりになり
研修生さんはその方のお見送りをし
実習を終えました。

 

 

最後まで聡明で愛情深い生き方を
研修生さんに身をもって
教えて下さいました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る