患者さんに常に関心を寄せ関わりを持ち続けることは

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関わる時間の長さだけでは
本当の意味で
相手を理解することにはならないと
気づかされた私でしたが

 

その後も
どのようにすることが

 


本当に患者さんに
寄り添うことになるのか

 
はっきりとは
わからないまま
試行錯誤を続けていました。

 

 

そのうち
いつも気さくで明るかった
その患者さんに

 
それまでにない
関わりの難しさを
感じるようになっていきました。

 
抗がん剤の効果もなくなり
腹水などが
溜まっていくようになったのです。

 

 

 

腹水は患者さんにとって
非常に辛いもので

 

 

 

一時的な効果しかないとわかりつつ
そして患者さんにもそう説明をし
腹水穿刺を行うことになりました。

 

 

 

行った日は大変楽になったようで
非常に喜ばれましたが

 

 

 

数日するとまた溜まるので
苦痛を感じ、また抜く。
を繰り返していました。

 

 

 

いつも固い表情をするようになり
明るさは失せ
話し掛けても会話が
続かなくなっていきました。

 

 

 

それでも、
プライマリーナースとして
何とか関わりを持ち続け

 

 

 

患者さんの気持ちに
触れていきたいとの
思いを強く持ってました。

 

 

ある日の夜
ナースステーションの脇の廊下を通り
自動販売機に向かったのを
見かけました。

 

 

 

私は近寄って行き
そばにあるロビーのソファに座って
話をしないかと持ちかけました。

 

 

 

病室にいる時より
話がしやすいのではないかと
思ったからです。

 

 

 

患者さんは応じて下さいましたが
これまで同様
会話が続きませんでした。

 

 

 

浮腫でパンパンになっている
両足をたたきながら

 
「どうしてこんな風になっちまったんだろう」
とつぶやくと
立ち上がってしまいました。

 

 

 

私は見送るしかありませんでした。

 

 

 

患者さんの思いを汲み取り
寄り添うことのできない自分に
はがゆさを感じました。

 

 

 

 

それから間もなくのある朝
その方がずっと泣き続けている
との申し送りがありました。

 

 

 

すぐに患者さんの所に行くと
涙を次々に流しながら

 

 

 

「安田さん。俺、ようやくわかったわ。
もうダメだってこと、よくわかった。

 

 

 
腹水も、
抜いても抜いてもすぐ溜まる。
っていうことは
もうやってもだめなんだ。

 

 

 
もう、会社のことも今日
全部任せることにするから
何にも心配いらないんだよな。

 

 

 

これまでありがとう。」

 

 

 

そう言って涙を拭きながら
握手を求めて下さいました。

 

 

 

涙は次々あふれてくるのですが
その顔はそれまでと全く違い
とても穏やかで
輝いているように見えました。

 

 

 

それまで受け入れられなかった
自分の死を
心から受け入れた時
人はこのような顔になるのかと
初めて見た思いでした。

 

 

 

自分の死を受け入れることは
本当に難しいことです。
それができずに旅立つ人もまた
多いと感じます。

 

 

 

私自身は
この患者さんの
闘病中の孤独な思いや

 

 

 

最も苦しんでいた時に
本当に理解しての関わりが
できていたとは
言えなかったと思います。

 

 

 

ですが、
相手がどんな様子であっても
こちらから常に関心を寄せ
関わり続けよう
と思ったことは確かです。

 

 

 

そして、
元々のこの方の
どんな物事にも
真摯に向き合って来た生き方と

 

 
明るく面倒見のいいお人柄で
ご家族、職場の方々など
たくさんのご本人を支える
関係性があったことで

 

 

 

その数日後、
穏やかなままで
旅立つことができました。

 

 

 

この方から私は

 

 

 

一人の方の
闘病から旅立ちまでを
支える時の

私自身の課題を見せて頂き

 

 

それに気づいてから
旅立つまで
向き直す時間
下さったと思っています。

 

 

ご本人と関わる時間の長さを
ようやく意味のあるものに
することができたのではないか
と思いました。

 

 

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