穏やかな最期を迎えられるためにできることの一つとは

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最近たびたび思い出している
一人の患者さんがいます。
若くして消化器のがんで亡くなった女性です。

 

その方はスラリと背が高く
容姿端麗で大変素敵な方でした。
自営での仕事の成功が、
持ち物からわかるようでした。

 

 

ご主人と離婚しており、
まだ学生のお子さんが二人
いらっしゃいました。

 

 

それでも別れたご主人は、
たびたび面会に来ていました。
とても穏やかな方でした。

 

 

何度か化学療法の治療で
繰り返し入院されていましたが、

 

 

最期の入院は化学療法のためではなく
黄疸や腸閉塞など、
がんの進行による
症状の対処療法のためでした。

 

 

入院してから
何かとナースコールが多くなりました。
少しのことから不安が増強するためです。

 

 

 

不安が強くなると
身体の症状も強く感じるようになり
またそれで不安も強くなる
という悪循環でした。

 

 

 

よく思い出すのは、
消灯後の時間です。
眠りにつくまで、何かと話しながら
少しの間、側にいたことです。

 

 

 

ある夜も眠れないと
ナースコールがあり
側にいて話を聞いていました。

 

 

それまでも、お子さんたちの話し
死の話しなど、
いろいろな対話をした日々が
あったのですが

 

 

その日は元のご主人のことでした。
「いい人なんです。
でも、どうしても許せないことがあってね」と

 

 

別れた原因となった出来事を
話して下さいました。
許そうと思う、という流れでは
ありませんでした。

 

 

ですが、その後の彼女は
とても穏やかになったように
感じられました。

 

 

「許せないことがあって」
と話して下さった
それだけですが
受け入れようとする準備だったことを
意味していたのだろうと思います。

 

 

まだ学生の2人のお子さんを残して
旅立つには心残りがあり過ぎます。

 

 

彼女の心残りを一番に果たしてくれる人。
その役割は元のご主人しかいないことは
誰もが思っていたことでした。

 

 

 

彼女の中でもそうだったのだと思います。
ただ、自分のわだかまりが
邪魔をしていたのです。

 

 

 

が、その「許せない」という
出来事についての話をした後は
傍から見ていると
彼女が安心して元のご主人に
甘えているかのように見えました。

 

 

 

夫婦の絆を取り戻すような
最期までの時間でした。

 

 

 

最期は本当に穏やかな表情で
元のご主人が見守る中
うっすら微笑みながら旅立っていかれました。
こんなに幸せそうな最期になると
思ってもみませんでした。

 

 

 

旅立っていく方でもとりわけ
若い年代の方は

 

 

人生の未完の事が多すぎて
気持ちの整理も現実面での整理もつかず
多くの心の苦しみ
社会的な苦しみ
スピチュアルな苦しみを感じます。

 

 

 

彼女が穏やかな最期を迎えられたのは
人生の中で彼女を一番
苦しめていたかもしれない出来事を
許すことができたこと

 

 

 

それによって彼女が

本当に必要としていた
「関係」を取り戻すことが
できたからだったろうと思います。

 

 

看護師が
そのような方を前にした時
人生で起きたことへの
アドバイスこそできませんが

 

 

 

頻回なナースコールに代弁されているような
患者さんの不安や苦しみに
寄り添うことによって

 

 

その人が人生の問題としてきたことを
自分なりに消化して
旅立つことの助け
できることがあります。

 

 

 

私が特に気をつけていたのは
夜の眠りにつく前の間
少しだけ長く
腰を下ろして側にいたことです。

 

 

 

夜の時間は
最も患者さんの不安感が募るからです。

 

 

安心感を与えるケア
言葉ももちろんですが
側にいる、ということも
大きな力をもたらします。

 

 

一緒にいる時間は
何も長時間べったり
というわけではなくてもいいのです。
それは少しの工夫と周囲の協力とで
生み出せることもあります。

 

 

 

上記は一般病棟にいた頃の話です。
様々な病期や入院目的の方がいて
バタバタしている病棟でもありました。
消灯前は特にです。

 

 

 

ですから眠りにつくまで側に居るのは
消灯後になってしまうことも
多かったのですが

 

 

 

一緒の夜勤の人に、
少しだけ部屋にいることを伝え、
もちろん必要な連絡はしてもらうようにするなど
協力を求めながら行っていました。

 

 

 

安心できるように
配慮を重ねたことで
彼女なりに自分の人生に折り合いをつけ
望んでいた穏やかな旅立ちを
迎えられたことを

 

 

 

随分経っている今でも
ありありと思い出します。
笑顔の彼女ばかり思い出し
その度に胸にこみ上げるものがやってきます。

 

 

 


 

 

 

 

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